エグゼクティブサマリー
- 非構造化データは多くの場合、未活用のまま、バラバラの形式でサイロにとどまっており、効率や意思決定の質向上、AIでの利用が限定される要因となっています。
- ハイランド「ナレッジエンリッチメント」は非構造化データを実用可能なインサイトに変換します。抽出、メタデータのタグ付け、固有表現認識などのツールを使用して、AIと自動化に利用可能なコンテンツに仕上げます。
- データの質、意思決定、運用拡張性を向上にもナレッジエンリッチメントは役立ちます。データエンジニアはデータの質改善ツールとして、アプリ開発者は開発プロセス加速とアプリ機能強化の手段として、ソリューション構築者は包括的ソリューションの考案と構築のサポート役として活用できます。
メール、契約書、レポート、顧客とのやり取り、スキャン文書など、非構造化データはあちこちに氾濫しています。データベースに整然と収まる構造化データと違い、非構造化データは変動要素が多く、整理、分析、ビジネスプロセスへの組み込みが難しいというデメリットがあります。
非構造化データは企業データの80%を占め、量そのものに圧倒されます。また、複数のシステムに散在しており、Forresterが実施したハイランド委託調査によると、組織内のリポジトリの数は平均で21にも達します。
複数のリポジトリに重要コンテンツが散在することにより、次のような重大な課題が浮上しています。
- アクセスが非効率:貴重な情報がサイロ内にとどまるため、効率的に見つけて使用するのが困難です。
- 形式がバラバラ:文書のファイルの種類やレイアウトが多種多様であるため、標準化にかなりの手間がかかります。
- 質的な問題:重複、古さ、不備といった質的に問題があるデータは、意思決定と自動化の妨げになります。
- AIと自動化面でのハードル:AIモデルは意味のあるインサイトを生成するために構造化済みの最終形の入力データを必要としますが、非構造化データにはノイズが含まれ、AIで利用可能な状態にはありません。
上記のような課題がある反面、非構造化データは大いなる価値を秘めており、適切に処理されれば、インサイトの宝庫となり、意思決定、自動化、ソリューション構築でのAI活用に拍車がかかるでしょう。
非構造化データから未開拓の価値を引き出す鍵となるのがナレッジエンリッチメントです。
ハイランド「ナレッジエンリッチメント」とは
「ナレッジエンリッチメント」はハイランドのAI駆動型ソリューションで、未加工の非構造化コンテンツを意味のある構造化データに変換して、AI、自動化、分析、ソリューション構築のために利用可能な状態にします。例えば、重要エンティティの抽出、メタデータの適用、コンテキスト情報との関連付け、初期状態で機械での読み取りと実用が可能な状態にするなどのアクションを実行します。
ナレッジエンリッチメントは主に次の2つのコンポーネントで構成されています。
- 「データキュレーション」の主な役割は、非構造化データを構造化、正規化することであり、使用可能な最終形にします。このプロセスの原動力となるのがハイランドドキュメントフィルターです。この点検・抽出・変換ツールは600種類以上のファイル形式のデータを構造化しつつ、元の文書のコンテキストを維持します。
- 「コンテキストエンリッチメント」は非構造化データの内容を充実させるために、関連するコンテキスト情報と関連付け、検索可能性とAI処理、意思決定を向上させます。
ナレッジエンリッチメントで業務手法を変える方法
データを構造化された最終形にするために処理後に複数の手順を実行する代わりに、ナレッジエンリッチメントはワークフローの早い段階でインテリジェンスを組み込みます。これによりコンテンツは取り込まれ次第、下流アプリケーションに合わせて最適化されます。
ナレッジエンリッチメントの仕組み:やや技術的な説明
ナレッジエンリッチメントのAPIは、堅牢な技術と自動化機能を組み合わせることで、質の高い構造化データを確実に出力する仕組みになっています。
定評あるツールによるデータのキュレーション機能
文書フィルターは600種類以上のファイル形式のコンテンツを抽出、正規化、構造化します。下流アプリケーションで利用可能なデータは一貫性のある最終形になるうえ、文書の論理的構造は維持されます。これにより組織は、多様な文書タイプのデータを、元の意味や意図を失うことなくシームレスに統合できます。
メタデータの自動タグ付け機能
メタデータの自動タグ付け技術により、画像を分析して、オブジェクト、場面、テキストなどの主な要素を特定したうえで、メタデータを生成して検索可能性とAIモデルの精度を向上させます。この機能により画像の分類と検索の効率が高まり、コンテンツへのアクセスしやすさと関連度を高めることができます。
データの正規化と構造化機能
ナレッジエンリッチメントは、非構造化テキストを標準形式に変換することで、コンテンツを機械学習、分析、自動化ワークフローで利用可能な状態にします。変換プロセスには、重複排除、形式標準化、インテリジェントコンテンツのセグメント化が含まれます。
固有表現認識(NER)
固有表現認識(NER)は、人、組織、場所といった基本的なエンティティを文書から特定し、コンテキストに応じた意味を割り当てる技術です。この技術により、分類作業の合理化とインテリジェントワークフローの自動化が可能になります。
ナレッジエンリッチメントで上記プロセスを自動化すると次の成果が得られます。
- 手動でのデータ準備作業の比率が下がる
- データの一貫性が高まる
- AIと分析アプリケーションによるインサイト生成が迅速化する
ナレッジエンリッチメントのメリット
ナレッジエンリッチメントは、非構造化コンテンツの実行可能なインサイトへの変換からAIのパフォーマンスと拡張性の強化まで、ワークフローを簡素化し、運用効率を向上させます。以下では、データ品質面、コスト削減面、意思決定面への効果を含めて、このソリューションの主なメリットを詳しく取りあげます。
非構造化データが実用的な情報に
ナレッジエンリッチメントは取り込み時点でデータのエンリッチメントを行うことで、未加工文書を構造化された、AIにすぐ利用可能なコンテンツに変えます。その結果、コストと時間がかかる処理前の手順が不要になります。また、整理方法とインデックス作成方法を改善することで、データにアクセスしやすくなるため、関連情報を素早く見つけてタイミング良く行動を起こすことができます。これにより、重要なインサイトをすぐ利用でき、意思決定の遅延が減るうえ、運用効率も改善します。
AIと分析のパフォーマンスが向上
構造化された最終形のデータは次の成果をもたらします。
- AI予測の改善
- 意思決定の質向上
- 処理時間の短縮
ユーザーは取得したインサイトが質の高い入力に基づいていると確信できます。
運用コストが削減
コンテンツワークフローにエンリッチメントを組み込むと、手動でのデータ処理という負担が軽減します。その結果、重要な業務にリソースを費やす余裕が生まれ、チームとワークフロー全体で効率が向上します。
拡張性が向上
より大量のコンテンツを扱う組織は、ナレッジエンリッチメントを利用して、処理するデータ量を増やすことができます。しかも複雑度は従来のままであり、シームレスな拡張が可能になります。
データ品質が向上
高品質なデータは効果的な意思決定とAIを活用したインサイトの基盤となります。
ナレッジエンリッチメントはデータの一貫性、正確性、完全性を高めるために、非構造化コンテンツを構造化し、メタデータを適用し、別々の情報の間に意味のある関係を形成します。その結果、ユーザーは信頼性と関連性が最も高いデータを使って作業できるようになるため、エラーが減少し、全般的な運用効率が向上します。
残念なことに、コンテンツが役に立つ状態に保たれていないため、古い、信頼性に乏しい、重複しているなどの課題が頻繁に発生しています。回答者の62%はコンテンツのエンリッチメントまたは改善措置を講じることで、コンテンツインテリジェンスへの適応度を高めています。一方で、コンテンツのほとんどはAIですぐ利用できないという回答も52%に達しています。
— 『The Rise of Content Intelligence: A New Era of Innovation in ECM』、Forrester、2025年
ナレッジエンリッチメントの導入実例
製品検出率の向上から保険請求処理の合理化や患者記録の構造化まで、ナレッジエンリッチメントは組織がより良い成果を実現し、シームレスに拡張するのに貢献しています。以下では、この製品がデータに関する複雑な課題の解決に真価を発揮している実例をご紹介します。
小売業:メタデータ生成を自動化
ある小売り大手企業は、メタデータの生成を自動化し、製品カタログ全体で固有表現を特定するためのソリューションを必要としていました。ナレッジエンリッチメントは、メタデータに一貫したタグ付けを適用し、コンテキストに応じた説明を作成しました。その結果、文書に関するデータの正確性向上、自然言語による検索の効率アップ、推奨エンジンの改善という成果を挙げることができました。
利用したナレッジエンリッチメントの機能:
- データキュレーションは、多様な文書形式にわたる製品情報の抽出と構造化に利用されました。
- コンテキストエンリッチメントは、ブランド、仕様、分類などの主な属性の特定に利用されました。
- メタデータの自動タグ付けは、検索精度と製品検出率を向上するために利用されました。
上記の強化機能により、製品データの信頼性と検索結果の関連性が高まるとともに、よりパーソナルな推奨が可能となりました。
21
企業が使用するコンテンツリポジトリの平均数
65%
非構造化データは組織内でほぼ未開拓の機会であると回答した率
89%
コンテンツインテリジェンスにAIを最大活用していない組織の割合
— 『The Rise of Content Intelligence: A New Era of Innovation in ECM』、Forrester、2025年
保険業:保険請求処理を改善
毎日数千件の保険請求を処理している保険会社を思い浮かべてください。従来、こうした請求にはさまざまな構造の書式と構造化されていない関係文書(診断書や写真など)が含まれます。ナレッジエンリッチメントがなければ、請求処理には膨大な手作業と不必要に時間のかかる承認手続き、高額の運用費が必要になったことでしょう。
ナレッジエンリッチメントの実装で利用可能になった機能:
- データキュレーションは多様なファイルタイプからコンテンツを抽出し、構造化する一方で、文書のコンテキストは維持します(写真、文書、メールなどが含まれる保険金請求ファイルは典型例と言えます)。
- コンテキストエンリッチメントは、保険金請求者、医療機関、車両の詳細などの主なエンティティを特定し、関連する保険契約と請求データと関連付けます。
- 画像分析は、提出画像に含まれる、車両のメーカーとモデル、損害の程度、請求との食い違いといった重要な要素を検出し、不正発見と請求の検証に役立ちます。
ナレッジエンリッチメントの利用は、保険請求処理の迅速化、手作業負担の軽減、不正発見率の向上につながります。
ヘルスケア業:患者記録を構造化してインサイトの質向上
医療提供者が扱う構造化されていない患者データは、医師のメモ、病歴、処方薬、検査結果など膨大な量に及びます。こうした記録から手作業で意味のある情報を抽出するのは、時間がかかるうえ、ミスが起こりがちです。
ナレッジエンリッチメントの実装で利用可能になった機能:
- コンテキストエンリッチメントは多様な医療文書から診断、投薬、アレルギー、検査結果などの重要な情報を抽出します。
- データキュレーションは患者データを標準形式に構造化して、電子カルテ(EHR)システム全体にわたる相互運用性を確保します。
- ナレッジエンリッチメントは、AI駆動型分析、予測モデリング、臨床判断の支援といった目的で重要な患者情報をすぐ利用できるようにして、意思決定の質を向上させます。
構造化されていない患者記録を実用可能な構造化データに変換することで、医療提供者は運用効率の向上、患者の転帰の改善、規制要件の準拠の合理化を達成できます。
ハイランドとナレッジエンリッチメントを選ぶ理由
ハイランドは文書処理とコンテンツインテリジェンス分野の専門知識を長年蓄積しており、高品質なデータキュレーションとコンテンツエンリッチメントソリューションの提供において他社と一線を画しています。その運用手法を通じて次のメリットを実現します。
- データは構造化され、当初からAIにすぐ利用可能である。
- ワークフローは将来の成長を視野に簡素化され、拡張可能である。
- AI駆動型インサイトは速度、正確性、費用対効果に優れている。
- 文書フィルターが対応可能なファイル形式は600種類以上と業界屈指のレベルであり、広範な文書タイプにわたってデータキュレーションがシームレスに機能する一方で、コンテキストは維持される。
ハイランド「ナレッジエンリッチメント」を競争上の強みとして、非構造化データをより賢明な意思決定とイノベーションを推進する戦略的資産に変えましょう。