Great Ormond Street病院
大手小児科病院が、同意書と署名の取得、臨床ガイドラインの使用をデジタル化することで、治療のワークフローを合理化し、患者体験を向上させています。
課題
紙の同意書には問題があり、無駄も多くなる
世界有数の小児病院である Great Ormond Street Hospital(GOSH)では、現在推進中のデジタルイノベーションの一環としてペーパーレス化を決定してから 5 年以上が経過いていました。
この病院では、特に患者との連携に不可欠な紙の同意書をデジタルに置き換えることを計画していました。しかし病院のスタッフは、紙の同意書からの移行には、あらゆる面でしっかりとした電子同意ソリューションを緊密に組み込む必要があるということを理解していました。その上、GOSH では非常に特殊な同意書のニーズを満たすソリューションが必要でした。
「最大手の小児科病院であるがゆえの課題の一つが、組織の性質上、手術の際に最大 6 種類の同意書が必要となることです」。そう語るのは GOSH の ICT プログラムマネージャー、Joanna Tucker氏です。
英国の法律では、GOSHのような小児科病院は、16歳未満の患者、16歳と17歳の患者、そして18歳以上の患者について、別個の同意書を取得するよう義務づけられています。また、スタッフには患者の宗教に関連する同意書を取得することも義務づけられています。これは主に、個人の信仰体系に合わせて血液製剤を適切に使用するためのものです。
こうした基準に関する規制と倫理面でのコンプライアンスを確保するには、膨大な書類処理が不可欠です。
GOSH の耳鼻咽喉科顧問である Chris Jephson 氏によると、病院は毎回の手術で 6 ページにわたる同意書を 6 セットも管理する必要があったといいます。また、電子同意ソリューションには、1 つの書類で複数の署名を取得する機能も必要でした。
「1 つの書式で非常に多くの署名を集めなければならないこともあります」と Jephson 氏は言います。「まず親、子供、担当医の署名が必要で、さらに通訳者、社会福祉サービス担当者、または副担当医の署名が必要になる場合もあります」
GOSH ではまた、写真撮影、MRI のリクエスト、その他医療行為のための追加の書式も必要でした。その結果、書類の証跡は非常にわかりにくいものになり、書類の紛失、取得漏れ、混乱につながりかねない状態でした。病院内のスタッフの間では、いついかなる時でも、こうした紙の文書が何種類も回覧されている可能性がありました。
解決策
ハイランドが複数署名取得用のフォームを提供
こうした複雑な状況に直面していた GOSH は、同病院の要件に厳密に対応する独自の動的電子同意書を設計することにしました。GOSH ではすでに医療画像処理で PACSgear を活用しており、さらに他部門ではハイランドのエンタープライズコンテンツ管理・プロセス管理ソフトウェアプラットフォームである OnBase も導入されていました。また同病院は、ハイランドの電子患者記録(EPR)システム Epic との統合も積極的に活用していました。
そのため、他のベンダーとともにハイランドも電子同意ソリューションのディスカバリプロセスに参加することになりました。
私たちが面会した業者のほとんどは、単独の署名を電子的に取得する方法しか提示しませんでした。私たちがこのことをハイランドに伝えたところ、数日後には複数の署名を取得するフォームを携えて戻ってきました。ハイランドの開発者が、わずか数日でこのアプリケーションをカスタム作成したのです。実に印象的でした。
— GOSH ICT プログラム マネージャー、Joanna Tucker
Tucker 氏はさらに続けます「今では書式は 1 種類のみで、その内容が患者さんの年齢と信仰に合わせて動的に変化します。むしろ間違った書式に記入するほうが難しいくらいです」。
紙ベースの業務プロセスから、デジタルで動的な電子書式への移行は、患者ケアのプロセスの重要な部分を一変させました。患者情報の保護という点でも、はるかに安全でセキュアな環境です。
「同意書を診察とリンクさせておけば、紛失することはまずありません」と Jephson 氏は言います。
同意書へのアクセス、入力、送信は簡単なもので、すべて OnBase を通じて患者記録内で処理されます。
初めにスタッフと医師が新しい同意書を作成し、それを Epic 上での診察(Encounter)とリンクさせます。
OnBase が同意書の書式を生成すると、Epic 上の記録から人口属性のデータがフィールドに自動入力されます。その後、電子的に事前入力されていないフィールドをスタッフが入力します。
これが完了すると、患者、保護者、臨床医の署名がタッチスクリーンデバイスを使用してデジタルで取得されます。
さらに、こうしたフォームはチーム全体のタスクリストに追加されるため、患者が手術室に入る準備が整うと自動的に医療チームに通知が送信されます。手術室で患者のステータスを確認し、手術チームにタイムアウト文書を提供するEpic Flight Boardsを通じて、術前準備完了、同意書への署名完了、チェックリスト完了の各時点で、臨床医に通知されます。
「これは紙の同意書では、自動的にはできません」とJephson氏は言います。
医師と患者の体験を向上させる電子同意ソリューション
ペーパーレス・システムの導入は大成功を収め、スタッフはさまざまな部署や特定の手術に合わせて変更された書面をリクエストできるようになっています。たとえばあるチームでは、MRI を受けなければいけない患者に対して、金属に関するアンケートと同意書をリクエストしています。
また、電子同意書は患者体験も改善します。患者が同じ処置を複数回受ける必要がある場合でも、毎回新しい用紙にすべての個人情報を記入せずに済みます。ハイランドのソリューションでは最初の同意書に記載された情報が保存され、署名を消去するだけで再署名が可能です。
たとえば 6 つのコースの化学療法で治療を受けている患者でも、コースごとに別個の同意書に記入する必要がなくなりました。代わりに署名が既存のフォームの最下部に追加されるため、医師の時間を節約でき、患者は事務手続きではなく治療に集中することができます。
もっと重要なのは、親も子どもも、電子書面に署名する体験を気に入っているのがうかがえる点です。私たちがコンピューターに入力しているのをただ見ているだけでなく、自分の治療のプロセスに参加しているように感じることができると思います。
- GOSH 耳鼻咽喉科顧問、Chris Jephson
病院のデジタルトランスフォーメーションが進むにつれ、医師たちは OnBase を通じてスタッフと医師の患者ケアをよりシンプルにする、新しい革新的な方法を継続的に発見しています。たとえば、あるレガシーシステムが Epic に置き換えられた場合には、OnBase が安全でアクセスしやすいリポジトリとして、GOSH が元のシステムから引き継がなければならない履歴データを保持します。
もう一つのイノベーションは、医師が患者の診察をしている間に、自分のデバイスを使って臨床用の写真を撮影できるようになったことです。法律により、医師は患者を特定できる資料を個人のデバイスに保管することはできません。ただし、Epic のセキュアな電子カルテアプリを採用した Haiku/Canto の同意取得メソッドでは、ユーザーが画像を撮影して OnBase に直接アップロードすることを許可しており、これで個人用デバイスを完全にバイパスすることができます。
医師が画像撮影のために患者を他の診療科に送る必要がなくなったことで、医師の抱えるリスクがなくなり、患者ケアも向上しています。
医師の臨床ガイドラインとプロトコルへのアクセスを簡素化する Mind Palace のローンチ
2023年、GOSH はハイランドとのコラボレーションをさらに一歩前進させ、臨床ガイドライン、ポリシー、手順をハイランドの OnBase プラットフォームに統合して収集・管理するための Mind Palace を設立しました。
これは患者管理サポートの最も難しい要素のひとつに対処するものです。院内のデジタルフットプリントが増え続ける中で、医師は複数の文書を検索する(そして見つけ出す)必要があります。そしてさらに重要なのは、必要に応じて文書へのリアルタイムでのアクセスを可能にすることです。
そのためのソリューションである Mind Palace は、スタッフのためのナレッジベースとして機能し、絞り込み検索が可能な閲覧機能、対話型検索、自然言語サポート、その他の直感的な機能で上記の問題に対応して、臨床業務の生産性と患者の転帰を向上させています。
これにより、スタッフは臨床業務のワークフローに合わない、時間のかかるレガシー文書閲覧システムを苦労して使わずに済みます。
その代わりに Mind Palace が、常時稼働でどこからでもアクセスできる、シームレスなシステム統合を備えた専用ツールとして院内全体の臨床チームをサポートします。
GOSH の最高臨床情報責任者である Shankar Sridharan 博士は、この新しいソリューションのインパクトを明確に理解しています。
GOSH では最も複雑で深刻な疾患を抱える子供や若者の治療を行っており、多くの専門分野を横断してケアすることもあります。スタッフが最高水準の治療を提供するためには、膨大な臨床ガイドラインの情報に、安全、簡単、迅速にアクセスできなければなりません。Mind Palace のナレッジベースは、この病院の電子カルテを補完する役割を果たしており、より良い医療を提供するのに役立っています。
— GOSH 最高臨床情報責任者、Shankar Sridharan 博士
優位性
ペーパーレスの電子同意書ソリューションと、最新の Mind Palace テクノロジーの導入事例では、GOSH とハイランドの専門的で緊密な関係が際立ちます。GOSH は患者ケアを重視する長期的なパートナーとしてハイランドを信頼し、デジタルイノベーションを安全に継続することができるでしょう。
これまでに、両方のプロジェクトで下記の成果を上げています。
紙をなくし、時間を節約:電子同意書ソリューションを導入する前、GOSH は従来の EPR で作成された同意書を使って、書面を印刷し、署名を受け、それをスキャンしてコンピューターに戻してから、紙をシュレッダーにかけていました。動的な電子同意書を使用することで、スタッフと医師は Epic に保存されている患者データをアップロードして、フォームへの事前入力ができます。患者データは常に最新の状態に保たれ、同意書の記入にかかる時間も短縮されます。
フォームへの迅速で簡単なアクセス:ユーザーは使いやすい単一のインターフェースで、事前入力された一連のフォームへのオンデマンドでの追加入力や署名、印刷が可能です。管理者はカスタマイズされたビジネスルールに合わせ、紙媒体での一連のフォームを事前に設定し、医療従事者が常に正しい書類を自信を持って作成できるようにしています。
カスタマイズされたソリューションでアクセスを合理化: GOSH のために特別に開発された Mind Palace ソリューションが、同病院の巨大なデジタルフットプリント全体にわたって様々なソースから情報や文書を取得できるよう、スタッフに共通の連合式検索インターフェイスを提供しています。このソリューションは、絞り込み検索が可能な閲覧機能、対話型検索、自然言語サポート、その他の直感的な機能で上記の問題に対応し、臨床業務の生産性と患者の転帰を向上させています。
患者体験の向上:6 ページにわたる紙の同意書を 6 セットも取り扱う代わりに、GOSH の動的な電子同意書を導入して、スタッフや臨床医が事務作業ではなく患者への対応に集中できるようになりました。インタラクティブな同意書は保護者や患者にも優しく、治療のプロセスに参加しているという実感を得ることができます。
ハイランドヘルスケアについて
ハイランドヘルスケアは、あらゆる場所で非構造化コンテンツを活用し、EHR(電子カルテ)やERP(エンタープライズリソースプランニング)システムなどの中核的な臨床および業務アプリケーションにリンクすることを可能にする、コネクテッドヘルスケアソリューションを提供しています。ハイランドヘルスケアでは包括的なコンテンツサービスとエンタープライズイメージングツールを提供しており、文書、医療画像、その他臨床に必要な豊富なデータを、最も必要としている医療関係者に提供します。この患者情報の包括的なビューにより、ビジネスプロセスが加速され、臨床ワークフローが合理化され、臨床上の意思決定が改善します。